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From 龍雲

2021年7月のメッセージ

先月はずっと福岡県にある実家に帰っていた。97歳になる父親の介護の真似事のため。普段は兄姉にその任を預かってもらっているのだが、今回はちょっとした事情のため帰らざるを得なくなった。
沖縄に移住して来て21年になるが、今回のように実家にほぼ一ヶ月帰省しているなんてことはその間なかったし、おそらく、1978年にデビューしてからもこんなに長い滞在は初めてのことだろう。もちろん、娘達がまだ学生の頃は夏休みに一緒に帰省することはあったが、それでも長くて一週間程度であったはずである。

家に着いてまず始めたことは。
要介護1を認定された父親のために、知り合いの業者さんに頼んで部屋の簡単なリフォームをすることだった。以前、玄関の階段で転倒して入院したことがあるため、その防止のために階段を落ちないような扉を設けた。それから介護ベッド等のレンタルの手配、ケアマネージャーを交えてのデイケアの打ち合わせなどを数日に渡って行った。全てが自分にとって初めてのことであり理解も十分とは言えなかったが、とにかく沖縄に帰った後も兄姉の介護がうまく進むようにその段取りだけはしっかりと着けたい一心であった。
何とか全体的な渡りを付けて東京でのライブを経由して沖縄に戻って来たところである。

腰が悪い。
昨夜、安い自宅のマッサージ機で腰をグリグリやったせいだろうか。近くの整骨院に行きたいが、行ったとて経験上、まず一週間はこの不自由さは続くだろう。靴下も履けなかったギックリ腰をやった時の一歩手前というところだろうか。やっぱり三日に及んだ草刈りが悪かったのかな。

帰省して介護の手配の次に行ったことは。
実家すぐ近くに4、50坪程の狭い土地があり、昔そこに倉庫を建てていたが台風で傾き近所に危険が及ぶことを恐れて取り壊し平地にした。そこが今は青天井の家の駐車場になっているわけだが、久しぶりに帰省しそこを一眼見て、この草ぼうぼうは一体どうしたんだ。このままだと、車さえも草に埋もれてしまうではないかと心配になり、とにかく草を刈らなければと焦った。一人で草刈り鎌を使ってではいつ終わるかも分からないので、YouTubeで調べて電動式の草刈り機を買うことにして、翌朝すぐに最寄りのホームセンターに出かけ、その他、長靴、軍手、防護ヘルメット、虫除けの上着等を仰々しく揃え、早速、草刈りに取り掛かった。
最初は草刈り機を扱うのも人生初めてのことゆえ要領が悪かったが、右から左斜めに切り下ろすというコツもだんだんつかめて来て、面白くなって我を忘れて草刈りに没頭した。結局、3日に分けて数時間草を刈ったが、数日間を置けばすぐにまた伸びて来る雑草の生命力に驚き、降参して五分刈りの昔の中学生の頭程度で切り上げて帰って来た次第である。

そのせいか腰が今悪い。
卑怯者!正直に言え!
はい。正直に申しますと、父親の介護の手配の合間を見て、友人宅でお酒をしこたまいただきました。それに草刈りと同義のゴルフも二度ほどやりました。これら全てが相まっての腰痛と心得ております。

ただ、そうでもしない限り。
今回、介護の世界を少しばかり垣間見て、自分も含めて老後に対する不安からの逃避と、そして何よりも、故郷へ居た堪れなかったまだ十代の頃の思いが蘇って来て、その切なさを紛らわしたい気持ちとかが、この腰痛の遠因であることもわかってほしい。