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From 龍雲

2020年6月のメッセージ

何とも不気味なこのコロナ禍にあって、ただただ日をやり過ごすだけのこの三ヶ月だったが、今月、緊急事態宣言解除が発出されて、いくらか自由な生活を取り戻せそうな少し安堵した気持ちになっている。待ちに待った事業の再開が業種ごとにstep1、step2、step3と区分けされて、先頭を切って制限付きながらも飲食店等で
営業が始まり、これまでの鬱憤を晴らすかのように活気付いているところもあるようだ。我々の業種に関しては劇場等はstep2になっていて再開も早そうだが、ライブハウス等はstep3以降のカテゴリーで今後の見通しが残念ながら立っていない。
関係者やファンの人達の色んな意見を総合して、できるところから安全を確認しながら少しずつ活動を再開できればいいが、第二波とか言われると、その踏み出す第一歩も地雷原を行くが如く慎重にならざるをえない。一日も早く収束、そして終息に向かってほしいが、自粛を緩めて待ちに待っていたのが人間だけでなくコロナもそうだとしたらまだまだ心を引き締めてゆめゆめ警戒を怠ってはならない。とにかく重症に陥らせないワクチンが開発されるまでの今しばらくの辛抱だ。

先日、本屋を生業とする友人が本を沢山送ってくれた。「この間に充電してもっと良い作品を作れ」の気持ちからである。ありがたい。こっちもそれなりにすることがあることも無視して。とにかく、その送ってくれた本の中に、本屋に行けばその背表紙を誰もが一度は見て記憶にあるだろうタイトルの文庫本があった。
『ペスト』(カミュ)
あ、知ってる、と言う声が聞こえて来そうだが、でもそれを読んだかと言うとそんなにはいないと思う。僕自身もそのタイトルを見て感染病のペストのことだと想像はできても、カミュと言う名前にまずは尻込みして、難解そうでもあり読んでいなかった。当然、本屋を長きに渡って経営してきた友人は読んで内容も知っているからこそ贈ってくれたのだろうが、今コロナウイルスのパンデミックの真っ最中にこれを読むと、ほとんど今の我々が置かれた状況と同じではないかと驚きを持って読み進めている。最初は誰もがそれを安易に捉えていたものが、日々感染が広がるにつれて、人間の営みが心と同時に破壊されてゆく経過が、感染病の本当の恐怖を教えている。
実はまだ三分の一しか読み終えてなく今後どう物語が展開するのかわかっていないが、ここまででもすでに今読むべき本だと確信できる。今この瞬間も怖いもの見たさに読了するのを自分自身に急かされている。まだ読んでいない方がいたら、どうぞ。

気兼ねなく人と接していられた日々が懐かしい。生まれ故郷や日本中を自由に旅できたことが懐かしい。見聞を広めようと世界を旅したことが懐かしい。何よりも、歌をファンの方たちを前に唄っていた日々が懐かしい。もう二度と、こんな思いはしたくない。戦争を防ぐことばかりに気を取られていたが、これから世界はそれ以上に感染病対策に本腰を入れなければならない。絶対に忘れてはならないことが今進行中なのだ。
後の祭りであるが、本当に防ぐことができなかったのか、世界各国で検証の必要がある。しかし、コロナがきっかけで戦争に発展するようなことがないように絶対注意しなければならない。そう言った意味では、多くの国の現指導者にはこれを機に退場してもらうしかない。そして新しい価値観を持った若者や女性の活躍に期待することが僕自身としては大である。言うまでもなく、自由を守ろうとする香港の若者が傷つけられることは絶対にあってはならない。
火事場泥棒のように次から次に出て来る内閣がらみの不正に誰もが怒りを覚えていることは明々白白である。これを機にみんなで変えよう。正しい政治が行われるように。一国が変われば、世界を動かすことだって可能だ。きっと風は変わる。実は、コロナに勝つと言うことは一つにはこう言うことかもしれない。