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From 龍雲

2019年11月のメッセージ

昨夜未明、トイレに起きて、今が何時なのかを確認するつもりで寝室のテレビのスウィッチを入れたら、画面に赤々と燃え盛る建物の映像が映し出されていて、一瞬、ドラマのシーンかあるいは海外の出来事かと思ったら、テロップで首里城火災中と出ていて、まさか、と驚いてベッドを跳ね起きた。
マンションの二つあるベランダの片方から首里城のあるこんもりとした丘を遠くに見渡せ、ベランダに出て様子を窺うと、まだ暗い夜空にそこら辺の上空だけが白く覆われているようで、この日、朝から風が強かったこともあってか、微かに焦げ臭い匂いがこちらまで届いて来ているようにも思えた。
朝5時前になって首里城の正殿が焼け崩れ、さらに東殿、西殿と延焼を続け、火の粉が周囲に飛び散ることによる類焼の危険を喚起するテロップもずっとテレビ画面に流されていた。しばらくして夜も明け、もう一度ベランダに出ると微かではあるが確かに煙が棚引いているのが見られ、ニュースに戻って、ヘリコプターの上空からの映像を見て、焚き火をした後のような無残にも燃え尽きかけた首里城正殿にショックなあまり言葉を失ってしまった。昔、本にあった三島由紀夫の金閣寺炎上もこのようなものであったのかという思いが一瞬心をよぎった。
500年前に築かれた首里城は、戦争で焼失して、平成2年に再建されていた。
沖縄に通い始めた当初、首里城を訪れたことがあるが、その時はまだ城跡のみで、その後復元されて今日に至っていた。最近は海外からの観光客も多く、折しもお祭りイベントの期間中であったと聞いた。火元の特定等、失火によるものなのかそうではないのか、今後の調査が待たれるが、いずれにしても、沖縄県民のシンボルである首里城の喪失は、誰の心にもぽっかり大きな穴を空けたのは事実で、いつになるかはわからないが元通りに再建されるまで、その穴が埋まることはないだろう。
首里城守礼門の前で琉球の着物を着て、ハチマチと呼ぶ冠を頭に乗せ、ファンクラブのツアーで沖縄を訪れたファンの方達を先回りして驚かせようとしたのは、もう何年前になるだろうか。沖縄に移住して来て20年、そのすぐの頃だと思うが、全国のファンの皆さんに沖縄を少しでも知ってもらおうと企画したツアーだった。当然のように首里城見学もあって、参加したファンの方もその時のことを思い出して心を痛めているに違いない。
来たる11月17日には、移住20周年を記念して久しぶりにライブを沖縄で行うことが決まっている。県外からも多くのファンの方が沖縄のそのライブに集まってくれることになっている。楽しみにしてくれていた沖縄旅行、そんな時に首里城がないなんて、考えられないし、とても寂しいことだ。しかし現実、首里城は焼け落ちてしまった。原因究明がもちろん先だろうが、鎮火したらすぐからでも再建に乗り出してほしいし、二度とこんなことが無いようにハイテクの粋を結集して防火対策を万全に復元されることを切に願う。
少しでも沖縄県民の喪失感を埋められるように、このライブで歌うことになる。
住まわせていただいている感謝の気持ちを込めて。