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From 龍雲

2019年10月のメッセージ

29日の昨日、仙台のライブを終えて先ほど沖縄に戻って来た。
一昨日の盛岡と、いずれの日もまだ日差しが強く、沖縄から長袖ばかりをトランクに詰めて旅出したものの、念のためにと用意しておいた上着など一度も出る幕がなかった。東京から盛岡に向かう時、新幹線の車窓の夕景は、稲刈りを終えた頃でゆったりと幾所にも煙が立ち上り、どこか秋めいて感じられたにもかかわらず。
仙台のライブの時ファンの方から「沖縄、台風心配ですね」と言われて、「え、そんなことになってるの」と初めて気づいたしだいで、慌てて今朝は早起きし、予定していた便より前の便に飛行機を変更して戻って来た次第だ。ところが着いてみれば何の心配にも及ばないほどのいい天気で、急いで損をしたような気持ちになったが、自宅に着いてニュースを見れば石垣島では飛行機が全便欠航になっているみたいだし、今夜あたり本島に最接近かと思えば、用心に越したことはなかったと思っている。でも今、ベランダに出て外を伺ってみたが、夜7時現在、風もあまり強くなさそうなので今回はここ本島には影響は少なそうだ。あくまでも、えせ天気予報士によれば。
9月のライブは結局、北国ツアーで終始したことになるわけだが、初旬の北海道ツアーもいい天気に恵まれ、いや、正直言って自分のイメージよりもどこも暑すぎて、せっかくの北国ツアーは肌寒いぐらいでちょうどよかったのに。
でも、でも、楽しかった。初めてレンタカーで周る北海道の旅。釧路から北見、旭川、札幌。それから小樽行って最後は函館。ほぼ北海道横断。それぞれの場所に良いライブハウスがあって、心やさしい人達と出会えて、僕自身も気持ちよく歌わせていただいた。終えたばかりだが、もう来年も訪れることを夢見てる。今度は縦断しようと。

熊注意の標識にワクワクしながら知床国立公園を羅臼に向けて車を走らせていた。初めての知床観光に、車中ではずっと頭の中で『知床旅情』が鳴りっぱなし。
加藤登紀子さんで有名な曲だが、何故か聴こえてくるのは森繁久彌さんの声。作詞作曲も森繁さんだと言うから凄い人だったんだなと改めて感心する。森繁さんの独特な節回しをものまねしながら、ふと詩の一節にひらめいた。「遥か国後(くなしり)に白夜は明ける」そうだ、国後島を見に行こう。うろ覚えで覚えていた詩は何故か「別れの日はきた羅臼の村にも」だったと思ったが、歌詩を見てみると「知床の村にも」と書いている。勘違いか。それでもう一度調べてみると、森繁さんは「知床の村にも」と歌っているが、加藤登紀子さんは「羅臼の村にも」と歌ってることがわかった。時代的に加藤登紀子さんの歌で覚えていたのだろう。
羅臼に行けば国後島が見える。南国の島に住む者には一生見ることがあるかないかの機会だ。この目で国後という北国の島が見たいと思った。
実際、羅臼国後展望塔から遥か遠くに横たえる国後島は雲の薄衣をまとった貴婦人のように、皮肉にも永遠に手の届かない存在として実に高貴に美しく感じられた。誰でもここから国後島を一度でも眺めれば、自分のものとしたいかあるいは返して欲しいと思うのは当然の感慨だろう。島影がすぐ手の届くところにあるのだからやはり私たちの島でいいのではないか。
兎にも角にも、見て感じることが大切なことだと思い知らされた感動の瞬間だった。