永井龍雲 Official Web Site

お問い合わせ

ホーム > From 龍雲

From 龍雲

還暦を迎えて真っ先にやるべき事は、断捨離と決めていた。

還暦を迎えて真っ先にやるべき事は、断捨離と決めていた。
この言葉を知ったのはテレビで紹介された本がきっかけであったが、今となってはこの言葉以外にそれ以前、ぴったしハマる言葉が一体あったであろうかと訝るほどに、今となってはなくてはならない言葉として「断捨離」は一般に定着した感がある。
通常の片づけとは違って、未練を絶って生き方を変えるほどの気迫がここには込められていて、元は仏教ともヨガとも共通する思想であるらしいから、やはり、年末の大掃除程度の片づけとは、甲子園で県の代表校を応援するのと母校を応援するの違いほどに熱の入れ方が違うのである。
数年前から60歳になったらそれをきっかけに断捨離を実行しようと思っていたら、昨年の夏、すぐ上の姉を63歳で亡くしてしまった。助けてあげることができなかった無念をどうすることもなく、歩いてお遍路して供養するしかないと思い込み、断捨離は後回しということで、都合約一ヶ月半かけて四国を旅し、7月上旬に結願を成し終えた。
それでいよいよ、断捨離ということになったわけだ。
沖縄の今の部屋は長女が四歳の時に引越して来てからのものであり、14、5年前に離婚して一人で住むようになってからも、荷物はほとんどその時のままにしておいた。年に一度、夏休みを一緒にこの部屋で過ごしていたので、なるべくなら写真一枚でも環境を変えずに元の位置に置いて、彼女らの傷つきを最小限にとどめてやりたい一心からだった。
当時幼い娘たちもいよいよ大学を卒業する歳になって、そろそろ彼女らの不要な荷物を処分してもいい頃かなと思い、今夏、彼女らの了解の下に、バービーの人形であったり、画用紙に残された落書きであったり、小さな洋服であったり、納戸に仕舞っていたものを三人で懐かしみながらゴミ袋に入れた。
今は納戸として使っている以前は彼女らの部屋に二段ベッドがある。
下は姉の伶奈、上は妹の佑果が寝ていた。よく下の段で二人が寝付けないでいる時、「小」字になって横になり童話を読んであげた。
二人のお気に入りは、「三匹の子豚」と「赤ずきんちゃん」
特に「赤ずきんちゃん」ではこっちもその気になって、狼の声色を真剣に真似て毎回、二人を恐怖に陥れたことが今懐かしく思い出される。
今回、その二段ベッドをどう処分しようかと大いに悩んだ挙句、結局、荷物置きとして残すことに決めた。ついでに部屋をクイックルワイパーで掃除する時、二段ベッドの下に積もった埃がおよそ20年来のものであることに思い至り、時の移ろいに感慨深いものがあった。

次に、処分すべきは自分の物である。
書籍に洋服に頂き物、オーディオ機器にパソコン等々。自分のささやかな歴史がそこにはある。今年一年かけてゆっくりそれらも断捨離するつもりだ。(一部の主に娘達への頂き物は、養護施設に貰って頂くつもりです。何とぞご了承のほどを)

60歳過ぎたこれからは、少しでも身の回り、考え方をシンプルにし、余分なことを思い煩わず、残された道を真っ直ぐに歩いて、天命を全うできたらと思う。
デビュー40周年60歳を過ぎて、自分にとって今ここで心構えを十分に整えることこそが、これからを生きる上で最も大事なことだと信じている。