一月の下旬に入っていきなり猛烈な寒波が日本列島を襲って来た。
毎年恒例の初詣に東京を訪れ、お寺のお堂の中で、例年よりも今年は暖かいかな、ぐらいに感じていたら、沖縄に戻った日の午後には東京は一変して雪化粧に変わって、羽田からのフライトもその後欠航になったみたいだった。
降雪に慣れた北国でも凍った水道管が破裂して自衛隊が給水車を出動させるような非常事態になっているらしい。ニュースの中で北海道の80歳ぐらいのおじいちゃんが、「わしが生まれてこんな雪は初めてじゃ」とインタビューに答えていたが、冬の厳しい北海道の老人が言うのだから本当にそうなんだろうとこの記録的寒波に説得力があった。
まだ今冬の寒波はしばらく続きそうだし、人が転んだり、車がスリップしたり、交通機関が混乱したりでそこに暮らす人達は本当に大変だろうと気の毒に思うが、寒いと言っても外は15度、部屋の中は22度の暖かい沖縄にいて心配するこちらのオイビトの言に説得力がまるでないことは自分が一番よくわかっている。
今この二月はプロ野球を始め内外の多くのスポーツチームがシーズン前に沖縄にキャンプで訪れているが、今年こそ早く寒波を脱出して沖縄を訪れたいと思う気持ちは例年以上のものがあるだろう。それほどにここ沖縄はやはり南国である。当たり前だけど。
そろそろ四国にお遍路に出かける準備をしている。
まずお大師様、空海上人のことを学ぼうと『空海の風景』(司馬遼太郎)上下を読み、お遍路関係の雑誌なども数冊買ったりもらったりしたのを少しずつ読んでいる。これまで山歩きにあまり経験がなく、一度、屋久島の縄文杉まで登ったことがあるぐらいだった。その時はウエアーも靴も山歩きに適さない無謀とも思えるほどの軽装だったが、今回は1400kmの長距離を歩く四国遍路に備えて、バックパックやウォーキングシューズやレインジャッケットなどをモンベルで買って用意している。お遍路に欠かせない菅笠や白衣や金剛杖その他は第一札所にあるお店で揃うらしい。
後は日程をどう調整するかだ。
今年中に88ヶ所を巡り満願することは決めているが、仕事もあれば何度かに分けてのつなぎ遍路になる。徳島県にある第一札所霊山寺から順番に巡る順打ち。この寒波に日本列島が見舞われている中、始める時期の気候によって荷物の多少も変わることだろう。寒さや降雨を思えばいつからスタートするかが大きな問題である。
さらに悩むのが泊まりのことで、この歳になってまさか野宿はこの時期(いやこの時期じゃなくても)きついだろうから、お寺の宿坊や旅館、ホテルを予約しなければならない。一日にどれほど歩けて、一日いくつ札所をお参りできるかは、雑誌が参考になるとはいえ、人それぞれの歩きのペース、かける日数等の違いがあるので同じにはならない。前もってどこまで宿の予約を入れるか本当に悩むところである。
一つ一つ、本を読んだり道具を揃えたりして、心はそこに徐々に向かっているが、一歩を踏み出してみるまで不安でいるのは仕方ないだろう。
一歩踏み出せばただ先に進むだけだ。それはマラソンで経験している。
今60歳になってお遍路を旅する理由はと聞かれれば、それは必然としか答えようがない。とにかく歩いてお参りしてみないことにはどうにも命が収まらない気がする。これを必然と言わずして何が必然か。とうそぶくほどに気持ちだけは高まっている。