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今年も海外の同じ大学に通う二人の娘が

今年も海外の同じ大学に通う二人の娘が夏休みで帰省中だったが、一ヶ月の滞在を終えて先週帰路についた。
帰省中は、思い出づくりにと実家のある福岡に連れて帰ったり、ちょっとした旅行に連れて行ったりするのが常だが、今年は実家に一週間滞在しただけで、小旅行をするまでには至らなかった。
彼女達もハイスクールの時代であれば、東京ディズニーランド、大阪のユニバーサルスタジオ、長崎のハウステンボス等のテーマパークに行くことを楽しみにしていたけれど、今秋から大学も4年生、3年生になって、自分たちからそれらの所に行くことを望むことはなかった。毎日、買い物、散歩、ドライブ等と一日一回一目的と決めて、それ以外はそれぞれの時間を部屋の中でのんびり過ごした。こちらの懐具合を心配してくれてのことだとも思うが、やはり二人とも二十歳を過ぎて考え方も楽しみ方も少しずつ大人になって来ているのだろう。

成田空港に二人を見送りに行く際、那覇空港で少しフライトの時間があったのでANAのラウンジに行くとその前の通路両側に規制線が張られており入り口付近が人で混雑して入りづらくなっていた。何事かと一瞬思ったが、すぐにVIPの警護ためだと思い至った。そう言えばこの日、今年6月にお亡くなりになった大田昌秀元沖縄県知事の県民葬が予定されていて安倍首相が来沖することになっていた。てっきりJALの政府専用機での訪問と思っていたがANAの民間機だったみたいだ。
長女の伶奈はラウンジに行かないと言うので次女の佑果を連れて入った。
ラウンジ内でタダのビールを駆けつけで二杯ほど飲んでいい気分になったところで、ジュースを飲み終えた佑果を促して、前日まで加計問題の閉会中審査などして何かと疑惑の最中にいる我が国の首相を、(一目拝んでやるか、めったにこんな機会もないだろうし)、と早々にラウンジを後にしたところ、もうすでに規制線は解除され、いつものゲート前の人通りに変わっていた。「見逃した」とミーハー気分も萎えて、「長女はどこだと」と伶奈を探すと、真っ直ぐこちらに小走りで向かって来て、「パパ、プライムミニスターと握手した」とiPhoneで撮影してたらしくそれを見せてくれた。
空港関係者か警護官かが画面に映った後、黒いかりゆしウェア(だと思ったが)を着た首相が画面に現れた。伶奈の所に来る前に何人かの観衆と握手して、伶奈と握手を交わす手は映っていなかったが、首相の顔ははっきりとビデオに映っていた。前日にテレビで閉会中審査を三人で何気なく見ながら、海外に長く暮らして日本の事情に疎い娘達に、「この首相を守るためにみんなで苦しい嘘をついている」と説明したばかりで、伶奈にしてみれば、昨日、「良くない人」と説明された当の本人と握手するなんて思ってもみなかったことだろう。本人曰く、「誰かわからなかったけど、みんなと並んでビデオ撮っていたら前に来て握手の手を差し出されたので、『こんにちは』と思わず言って握手した」とのことだ。実に邪心なく素直で良い子ではないか。(佑果と二人でこの偶然をしばらく笑った)
とまあ、離れて暮らす親子のしばしの別れに、我が国の首相までもが花を添えてくれて、「一期で辞めとけばよかったのに」と首相に対して真面目に同情心まで起こった。国民を軽視した慢心以外の何ものでもない。
いつもの通り、成田に着いてもそれまでは何でもなく笑って過ごしていたのに、いよいよゲートに向かう瞬間になって三人で涙して別れた。
来年、伶奈は大学卒業で佑果は4年生。
こんな親子の夏はいつまで持てるのだろう。