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第88回選抜高校野球の決勝戦

第88回選抜高校野球の決勝戦、四国は高松商業と奈良の智弁学園のテレビ観戦を終えて、このメッセージを書き始めている。延長戦の末、2対1で智弁学園が劇的なサヨナラ勝ちをおさめた。これで清々しき高校球児たちの春の祭典も終わり、明日から月も変わって、桜前線の北上に伴って全国的に春本番を迎えることとなる。
明後日の2日北陸は金沢、そして3日上越でコンサートを行うが、今まさに桜の開花を迎えたばかりの様子で、明日からの旅立ちに気もそわそわし始めている。両地とも多分に思入れのある土地であり、それぞれにまつわる物語を歌にした新曲を用意して行くつもりである。その地のファンの方達にどんな反応をいただけるか。誠意だけでも伝わると嬉しいが。
とは言え、コンサートで訪れたどんな土地でも、その地にちなんだ歌が書けるかというとそんなことはない。やはり自分の心が刺激される何かがあってはじめて創作意欲が生まれるし、結果として幾つかの個人的なご当地ソング的なものを作品に仕上げている。
上越で唄う瞽女さんをテーマにした歌も、まだ幼き頃、目を患っていた亡き母の面影を重ねてのものであり、昨夜作ったばかりの金沢をテーマにした曲も、二十歳早々に初めて金沢を訪れて、室生犀星を知ったり、失恋したり等々、種々の思い出が昇華してできたものであり、長き時を経てやっと何とか形にできたものである。命までとはとても言えないが、身を削ってしか書けない不器用な作家の一人としてはそれなりに作る曲の一つ一つには魂が込められている。金沢でももし歌える状況ができれば是非唄ってみたいと思う。もちろん、その後の東京は渋谷のさくらホールのコンサートにおいても、魂を込めたまた違う新曲を披露するつもりだ。
先月だけでも1ヶ月で10曲近くの歌を作ったが、まだまだ何かできそうな気もするし、反対に、一旦想像が萎えてしまうと、もう書くべきことが見当たらないような思いに落ち込むことになる。
そんな毎日の繰り返しで40年近くの長き夜を過ごして来たが、今年は兎にも角にも、人生最後の勝負の年と自分に言い聞かせて、創作に集中しなければならない。そうしてこそ、運否天賦の心境、運は天が決めるものと、諦めもつくだろう。
歌人生においても、これまで何とか延長戦をしのいで生きているようなものであり、今もう一度無心になって全力で戦えるか、それによっては劇的なサヨナラ勝ちが待っているかもしれない。
もし次にヒット曲が書けなければ引退する。
エイプリルフールだから言える宣言をして、そろそろ明日からの旅の支度をするとする。