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今月の22日、約30年ぶりに青森県金木町の太宰治の生家・斜陽館を訪れる。

今月の22日、約30年ぶりに青森県金木町の太宰治の生家・斜陽館を訪れる。約30年前、太宰の命日を題材に作った『桜桃忌~おもいみだれて~』という作品を発表して、その販促キャンペーンで当時旅館だった斜陽館を訪れ、太宰の部屋だったという四畳半ぐらいの部屋に一泊させていただいた。〈ここで太宰は育ったのか、何を夢見ていたのか〉とかあれやこれや感慨に耽っていると、視線の先に漢詩の書かれた襖があり、その中の《斜陽》という二文字が目に飛び込んで来た。きっと太宰は子供の頃から無意識にこの言葉を脳に刷り込んでいて、あの晩年の名作を『斜陽』としたに違いない。あくまでも自分勝手な想像に過ぎないけれど、きっと。
その斜陽館、今は太宰治記念館として運営されており、聞くところによると、この場所での初めてのライブをさせて頂けるとのことで、その幸運に何か不思議な縁のようなものを感じる。二十歳前後の時に太宰の小説にとっぷりはまり込んで、その繊細な心の叫びに大いに共感し、その破滅的な生き方に憧れさえした。ある年の六月の命日には、雨の中、東京三鷹の禅林寺のお墓まで一人墓参りしたほどでもある。もし今、太宰治の生家・斜陽館で唄うに相応しいアーティストは、と聞かれたら、自分しかいないと自負して言える。それだけに選曲をどうするか今から悩むところではある。何れにしても、太宰に、いや、太宰先生に恥ずかしくない誠意ある歌を想いを込めて唄うつもりだ。
東北を元気に。このイベントにはそんな願いも込められている。
そんな意味でも一人でも多くの方に参加していただければ、この上ない幸福である。

 

2013年6月1日