夜中に起きてこのメッセージを書いている。さあ何を書こうか、と気合いを入れても何も良い話題が浮かんでこない。そこでビールなどを口にすればホロ酔い気分で、鳥が空を舞うが如く自由な発想が生まれるかと思いきや、そうでもない。そこで小瓶一本ではやはり足りないのかと合点して、二本目を喉に流し込んだが、鳥の舞う気配が微塵もない。そうだ、銘柄のせいだ、とハイネケンからコロナに切り替えて三本目を今飲み終えたところだが、実際、眠くてしょうがない。しかし、更新ギリギリなのでこのままだらだらと思い付くままに書き進める。鳥も一向に飛ばないままに。
酒はいけない。よくこれで失敗をやらかす。酔い覚めの自己嫌悪ほど、落ち込むことはない。あまり付き合いがない人の場合は当たり障りなく、むしろいい意味、無責任に楽しく飲めるのだが、かえって親しい人の方が、迷惑をかけることが多い。自分としてはごく少ない親友たちと飲み語るのは至福な時で、100%彼等を信頼して飲みに入っている。神明に誓って嘘じゃない。がしかし、たまたまツボにはまるようなマジな話になった時、ここは自分を理解してもらうためにもしっかり誠意を持って話さなければいけない、と思い熱弁を振るい出すと、ついつい言わなくてもいいことまで抑えが効かなくて言ってしまい、かけがえのない親友を傷つけることに結果なっていたりする。本意ではなく。本当に情けないことだ。
酒を飲んでストレスを発散させることは悪いことではないし、酒を飲んで本音を言うことも悪いことではない。それこそが酒なのだから。でも、酒はいけない。我を失うほど飲んではね。愛を忘れるほどに酒に飲まれてはね。
ここで私から被害を被られた親しい人達に謝罪をし、そしてかつ申し上げたい。
すみませんでした。以後気をつけます。でもあなたを傷つける悪意があってのことでは決してないので許して下さい。今後被害をお与えしないとお約束できる保証は残念ながらありません。ただ、そんな時こう思って頂くと幸いです。龍雲は今、幸せなんだな。心を自分に許してるんだな、と。
あれ?ちょっといい感じで鳥が飛んできたかな?鳥と言えば、北海道。
「蒼穹」と言う曲が僕にある。自分で最も好きな曲だ。理由は、曲の良し悪しの問題でなく、できた背景にある。「蒼穹」も実は「道標ない旅」と同様、グリコのコマーシャルとしてプレゼンされた曲だった。結果として当然ながらコマーシャルのイメージとして「道標ない旅」が採用されることになるわけだが、当時の自分自身の心情としては、「蒼穹」により近いものがあった。デビューして2年、3枚目のアルバムの頃、曲作りや恋愛、人間関係すべてに躓いて、こんなはずじゃなかったと失意の底にいた時、まだあまり馴染みのない北海道の地で一人夜明けのホテルの窓を見下ろして、鳥のように飛ぶことを一瞬思ったことがあった。僕の青春の凝縮された一瞬だったと思う。だから、今でもこの歌を唄う時、あの頃の自分が若く愚かで、そして年老いてなお今でも愚かで、だからこそ自分が我が子のように愛おしく涙があふれる。そんな曲は他にはない。僕にとって個人的に特別な曲だ。
「蒼穹」の生まれた街、北海道。
今週からツアーが始まる。まだまだ無名の街。だから少しでも多くの人に聴いてもらいたい。たとえ後一人でも多く。「蒼穹」を彷徨う僕のことを。
先月、東北の被災地を再訪した時、移動する車の中から見た大空を天翔る鳥は、僕に失いかけた孤独の本質を思い出させてくれた。一人だから叫ばずにはいられないんだ。涙せずにはいられないんだ。何かを産まずにはいられないんだ。 新生東北には同じ孤独がある。
そして僕の歌の原点もそこにある。
2011年11月1日