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台本の読み合わせに尊敬する演技の師匠である西田敏行の隣に侍っていた。

 

台本の読み合わせに尊敬する演技の師匠である西田敏行の隣に侍っていた。
師匠とは誕生日が同じ11月4日で、『今度、生まれて来るとしたなら』という自分の曲もレコーディングしていただいた浅からぬ仲であり、いつかお会いしたいと一方的に思っていたが、こんな形でお会いするとは。
セットを模しているのだろうか薄暗い部屋の中で、テーブルを囲んでいる役者さん達に台本が配られていた。師匠である西田敏行も真剣に台詞を口に乗せて練習を繰り返していた。「おはようございます」遅れて部屋に入って来た役者さん達と「おはようございます」とあいさつを交わしていると、な、なんと突然目の前に現れたのが今をときめく国際俳優の渡辺謙だった。恐れ入って、「おはようございます」とあいさつするとあの大きな目だけで「ああ」とだけ無愛想に言って通り過ぎて行った。大スターとはあんなものかと、ちょっとファンだっただけにがっかりしたが、立場の違い上、致し方なかった。
師匠に付いてそろそろ1年が経ち、自分も台本の一つももらえないかと思い、師匠に尋ねたところ、「何て言うかな永井ちゃん、いい?いい? そんなに簡単に台詞なんてもらえないの、いやだな」と『釣りバカ日誌』そのままのキャラで叱られた。「じゃあ、これ読んでごらん。読んでごらん」と台本を押し付けられて戸惑っていると、渡辺謙がいつの間にかテーブルを挟んで目の前に座っていた。 「NHKの大河ドラマ、『独眼竜正宗』の頃から大ファンだったんです」テーブルを一緒にするなんて二度とこんなチャンスはないだろうと勇気を振り絞って想いを伝えた。実際、当時からこの役者は大きな演技をする人だなぁと感心していた。体の大きさでいえば同じような俳優はたくさんいるが、その演技があたかも画面の空間をも振動させるように感じさせる役者はそうはいない。例えるなら黒澤映画の三船敏郎に最も近い俳優と言えるだろう。そんな彼も大病を患い、再起不能かと思われていた時期もあったことを記憶している。もちろん本人の努力は壮絶なものがあっただろう。しかしこのカムバックは選ばれし人のものとしか到底理解できない。トム・クルーズとの共演『ラストサムライ』の役の成功は日本人においては彼にしか成し得なかっただろう。
さすが渡辺謙。そんな自分の憧れる心を敏感に察知してか、「君も努力すればいい役者になれそうな目をしてるよ」と褒めていただいた。すると隣に座っていたマネージャーか誰かが渡辺謙の耳元に顔を寄せ「謙さん、まずいですよ。あの人歌手ですよ」「歌手?誰よそれ」「シンガー・ソングライターの永井龍雲」あ、そんなそんな言わなくても。すると大スター渡辺謙、大袈裟に後ろの壁に仰け反って「え!何それ。そうならそうと早く言ってよ。親戚の友和がコマーシャルに出てたやつでしょう。人が悪いな永井さんも」重厚な演技とは裏腹な軽いリアクションに大いに好感度が増した。

 

ところで俳優と言えば、あの根津甚八さんが一作限りで映画にカムバックするらしい。大好きな役者さんだ。デヴュー当時、僕の歌も歌ってもらったし、それが縁で酒もご一緒したことがある。日本青年館のステージにもゲストで来てもらった。とても気さくな良い人だった。根津さんのファンの方には奥様の書かれた『根津甚八』という本が出版されている。本物の役者根津甚八の今を知りたいなら是非読んで頂きたい。

 

それで、西田敏行と渡辺謙はどうしたかって?
夢だから仕方ないでしょう。昨日本当に見た夢なんだもの。夢に怒ったってしかたないじゃん。あぁ、面白かった。

 

2015年5月