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From 龍雲

福岡に育って

福岡に育って、小、中、高と土曜日半ドンで学校から帰ってからの楽しみは、小学校時代はローラーゲームをテレビで見ることで、チーム・サンダーバードのリチャードブラウンに憧れ、放送後は家のベランダで電気工事用のヘルメットをかぶってローラースケートを履いて一人戦っていた。中学校時代は吉本新喜劇で、大阪のお笑いは福岡では当時から人気があり、岡八郎、花紀京のボケに腹を抱えてみんなが笑っていた。そして高校時代は確かカップヌードルのコマーシャルが流れていた『ヤングおーおー』見ることだった。最近、六代目桂文枝を襲名したばかりの桂三枝さん始め、明石家さんまさん等の当時関西若手芸人のパワーあふれるお笑いにハマって毎週欠かさずある時期見ていたような気がする。それだけに、デビュー後初めて大阪に来てコンサートをした時に、さんまさんが楽屋を訪ねてくれた時は驚きのあまり気後れしたと同時に、大阪に今いることを夢のように感じていたことを思い出す。

 

福岡はおかしなところがあって、食やお笑い等の影響は関西からが大であるのに、志向としては東京をめざしているところがある。そう言った意味では僕自身も典型的な福岡人で、大阪の何か人間を見透かすようなところに、ある種の畏敬とある種の違和感を同時に感じるのだろう。今ではどうだろう。その感覚があると言えばあるし、ないと言えばない、とまあ、そんなところだろうか。

 

先日、子供と大阪のユニバーサル・スタジオに二泊三日で旅行した。スタジオに隣接するホテルを予約して、夏休みの子供のためにテーマパーク三昧を覚悟していたが、猛暑の中、二日間は辛いなぁと思っていたら、丁度着いたその日、甲子園球場で阪神対巨人戦があることを知り、球場がホテルから近いこともあり、子供たちを説き伏せて、見に行くことにした。
甲子園球場は二度目で、バース、掛布、岡田で阪神が優勝した年に訪れて以来だった。風が爽やかで絶好のナイター日和、三塁側内野席前方の思ったよりいい席が空いていた。期待していた甲子園名物のオモロい野次は意外と少なく、隣りの会社帰り?のおじさんと二言三言話したぐらいな静かな観戦だったが、七回裏阪神の攻撃回の風船飛ばしだけはやはり気分が大いに子供も僕も盛り上がった。チラッと横を見れば70才ぐらいのおじさんも風船を飛ばそうと何度も何度もタイガースカラーの黄色い風船をふくらまそうとするのだが、酔っ払っているせいか、いっこうに風船がふくらまず、見かねて、「代わりにふくらませましょうか?」とは、おじさんの唾のついた風船ではとても言えず、一つ充分にふくらませた風船をおじさんにあげた。受け取った時に「大きに」と言ってくれたかどうかは歓声で聞こえなかったが、その目は少年のように喜んで見えた。夏の夜空に二人の娘と僕と見知らぬ大阪のおじさんの風船四つが三万人以上が飛ばす風船に混じって高々と舞い上がって行ったことは、この夏の娘と僕の小さな小さなエピソードの一つであった。

 

そんな大阪で来月9月8日、約3年ぶりにホールコンサートを行う。旅行で出かける大阪ではなく、今度は真剣勝負の大阪である。デビュー35周年を大阪のファンの方たちと共に楽しみたい。

 

2012年8月2日